6人が本棚に入れています
本棚に追加
そこには全力で攻撃を仕掛けている天使と一つの影が在った。
「あ、あれは・・・っ!」
天使の攻撃を容易く受け流し、翻弄する黒い影。
早過ぎて目で追うのがやっとだ。
これは、・・・黒騎士だ!
その剣撃は蜂の羽ばたきよりも速く、正確に天使に刻まれていく。
宙を舞う姿は落ち葉のように不規則でいて動きの読みようがない。
時折放つ閃光は天使を貫通するほどの威力だった。
天使と黒騎士の戦いは自分達と真逆の一方的な展開だった。
スッと目の前に黒騎士が降り立った。
その背中からはもはや人外の力を感じ取った。
黒き衣に金髪の髪がなびく。
チラッとこちらを水色の瞳が覗いた。
「・・・。」
黒騎士は無言のまま天使の方に振り向き、剣をかざした。
その瞬間に剣から閃光を放ち、天使の真芯を穿つ。
「ヴォオオオオォォォ!」天使の声なのかわからない音が鳴り響く。
天使は紅く光ったかと思うと、白い光を黒騎士に目掛けて放った。
その光は自分達に向けて放たれたモノよりも遥かに大きかった。
天使の一撃は黒騎士に命中するとけたたましい音をあげた。
それと同時に凄まじい爆発が生じ、辺りを吹き飛ばした。ダン達はその爆風にとばされ地面にたたき付けられた。
目を開くと青く光る円形の紋章のようなモノが黒騎士を取り囲んでいた。
その一帯だけはまるで何事も無かったかのように綺麗に残っていた。
「もう人間の戦いじゃないな・・・。」
ダンは素直にそう思った。
黒騎士は周りの青い紋章壁を解き、魔力を集中させた。
その瞬間空気がガラリと変わり、恐怖にも似た感覚を覚えた。
暗く冷たい魔力の波動。
もし敵であったなら今すぐに逃げ出したかもしれない。
黒騎士が魔力を解放した瞬間にさらに激しい悪寒がした。
「天・・・使・・?」
ダンは目を疑った。
そこには漆黒の翼を拡げ、黒い髪をなびかせながら深紅の瞳で天使を見つめる黒騎士の姿が在った。
天使と天使が戦っている。
ダンはそんな印象を受けた。
言い知れぬ感覚にシリウスを呼び、急ぎ本部へ事を伝えるよう伝令を頼んだ。
シリウスはこの場を託すと本部へ走っていった。
だが事の結末はあっという間だった。
一振り。
それで全ては終わった。
黒騎士は青白い雷をまとわせた剣を一振りさせた。
すると大地が揺らぐような衝撃で天使を真っ二つに切り裂いた。
天使が白い炎を上げながら消えていく。
天使はそのまま消滅した。
最初のコメントを投稿しよう!