第一章~天使と黒騎士~

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天使が燃え尽きたあと、ダンは身体の力が抜けていくのを感じた。 近くにはまだ黒騎士がいたが、限界はとっくに超えている。 倒れゆく中で天使の燃えカスの中にきらりと光るモノが見えた。 そこでダンの記憶は途切れた。 ―兵舎内、医務室。 気がつくとダンは医務室のベットでねていた。 周りを見ると、フィーネの姿もあった。 「隊長!?気がつきましたか!」 目をやるとシリウスが医務室のドアを開け、見舞いの品をゆかにばら撒いているところだった。 シリウスはすぐに医療兵を呼んで来ると言い残し、床に見舞い品を残したまま走って行った。 「お早いお目覚めですね、隊長?」 声の方向を見ると、フィーネがこちらを微笑しながら見ていた。 フィーネも天使戦で受けたダメージが大きく、同じ特別室に入れられたようだ。 もっとも【天使の燃えカス】の光を浴びた事が一番の要因らしい。 ダンとフィーネは互いに生きて帰れた事を冗談交じりで話しながらシリウスの到着を待った。 勢いよく医務室のドアが開く。 「隊長連れて来ましたっ!!」 医療兵はやや苦笑いで部屋に入り、手早く診察をすると二、三注意事項と完治までの安静期間を告げて部屋を後にした。 ダンは二人に風にあたって来ると言い、医務室を後にした。 医務室を出て階段を上がり屋上に出る。 まぶしい光とともに心地よい風が身体を通り抜けて行く。 シリウスの話では丸二日ほど眠っていたようだ。 左腕を軽くまげ伸ばし、骨折箇所の回復具合を確かめる。 まだ軽く痛むものの、骨は完全につながっていた。 それと言うのもダン自身の魔法スキルによるものだ。 ぼんやりと空を眺めて天使戦を振り返る。 全く歯が立たなかった自分達。 そして、どこからともなく現われ、一瞬で天使を倒した黒騎士。 ダンは自身の非力さを痛感し、もっと強くならなくてはと考えていた。
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