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空を見上げ、感傷にひたる。
「怪我の方は如何ですかな?」
少ししゃがれた老人の声が聞こえて後ろを振り向いた。
そこには第三兵団・団長のウラヌスが立っていた。
「まだ傷はまだ少し痛みますがこの通り、二週間ほどで復帰できそうです。」
「それはよかった。」
ダンの答えに少し安堵の顔をしたウラヌス。
しかし、その顔はすぐに険しくなった。
「少し、お話をいいですかな?」
ウラヌスは近くのベンチに腰掛け、ダンにも座るように促す。
そして天使戦の被害、その後について語りだした。
ウラヌスによると天使戦の被害は大きく、兵士の七分の二を失ったとの事。
また、現場復帰の見込みの無い怪我人を合わせると兵力は約五分の二にまで落ちてしまったらしい。
天使との戦いもそうだが、他国との領土争いもまたこの時代の常だった。
また、天使を倒した後に残る宝玉も他国との争いの火種になる要因の一つだった。
天使の宝玉は富と繁栄をもたらすと言われる。
その宝玉のために過去に何度となく戦争が起こっていた。
終わらない争いの世界はその連鎖を断ち切れないでいた。
ウラヌスとの会話が進むにつれ、自国の置かれた状況にダンは不安を隠せないでいた。
「まぁ、今一番の心配するべきは自分の身体じゃて、ゆっくり休養をとるように。」
そう一言言うとウラヌスは立ち上がり、屋上を後にした。
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