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その頃ダンは森を駆けていた。
遠くから肉の焦げる臭いが木々の隙間から流れて来る。
遠くの空は雨雲がかかっていて時折雷鳴が轟いている。
「急がなければ・・・。」ダンは走る速度を早めた。
肉の焦げる臭いがきつくなった辺りで戦場痕が多くなりはじめる。
「・・・近いな。」
雷鳴も一層大きくなる。
そこに友軍の別動隊が目に入った。
ダンはすぐに駆け寄った。
「ここで何をしている?」
そう言いながら箱を運んでいる事に気が付いた。
「これは?」
ダンはだいたいの察しは付いていたが問いただした。
小隊長は仕方なく答える。
「これは大事な任務なのです。」
小隊長は自分達の行動に納得をしていないような口調で続ける。
「他国がこの期に攻め入るのは必至、ならばせめて宝玉だけでもとの命・・・。」
ダンは何処にも向けられない怒りを抑え、小隊長に補充物を手渡すと急ぎ最前線へ向かった。
途中、息のある兵を見つけては治療を試みたが、設備も技術も無いダンにはどうしようもなかった。
『上の命令』それを自分自身知らなかった事、奮闘している最前線の兵達、事実を知っていながら仕方なく命令を遂行する別動隊。
込み上げる怒りを胸に最前線にたどり着く。
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