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―某国、領内の平原。
慌ただしい兵士達の声が飛び交う。
大小6つ程の野営テントの中で上官らしき人と部下のやり取りが続く中、次々と怪我人が運び込まれる。
「医療班、こっちに来てくれ!」
医療班はとても数が足りているとは思えないほどの怪我人の数だ。
「痛い、痛い・・・助けてくれっ・・。」
悲痛な声がテント中に聞こえる。
「頼む!仲間が、・・・仲間が息をしていないんだ!誰か!」
人手が足りずにまともな治療も受けられない状況である。
一人の上官が呟く。
「・・・くそう、天使さえ・・天使さえ現れなければ俺達は・・・。」
静かに、だが激しい怒り、悲しみ、諦めさえ感じる。
彼等が相手にしているのは天使と呼ばれるものだった。
一人の兵士が息を切らせながらテントに駆け込んで来る。
「現れましたっ!騎士が、黒い衣の騎士が現れました!」
テント内は一瞬静まり返り、どっと歓喜の声が上がる。
「これで・・・これで助かるぞ!」
上官は部下に医療班に加わるよう指示し、急ぎテントを後にした。
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