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中年の女性は「料理の支度をするから」と言って家の奥の台所に行きました。リンも何も言わずに手伝うために女性の後につきます。
半刻ほどが過ぎると料理は家の中央の部屋にあるテーブルの上に置かれていました。
それは質素と言ってかたづけるには余りに量が少なかったが、二人はいつものように食べ続けていました。
「リン」
女性は何気なく呼びかけました。しかし、その手はなにか意を決しようとするように震えていました。
「なんでございましょうか、おばさま。」
具材が、最近採れたばかりねじゃがいもを細かく煮ただけのスープを飲んでいたリンが、手を止めて答えました。
「明日の儀式のことなんだけど、いつもより少し長くなりそうだよ」
そう言われると、リンは怯えるように体を硬くなってしまい、おそるおそる声を絞りあげました。
「どうして…でしょうか。明日は、祭りが主で儀式は簡単に終わらせるって、この前おっしゃってくれたじゃないですか」
女性はリンの顔をじっと見つめ、それから呆れるように溜め息を一つつきました。
「リンさ、あんた一緒に遊びたい人がいるんじゃないの?」
「え?」
リンは戸惑いながらそう呟きました。
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