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溺れていた少女は宙に浮き、そのまま近くの川岸に飛んで、そこに下ろされました。
中年の女性は、少女が川岸にいるのに気が付くと、急いで少女のもとにかけつきました。
「よかった……!本当に無事でよかった!私の愛しいリンよ……」
そう言いながら女性はびしょ濡れになったリンに抱きつきました。
リンと呼ばれた少女は神妙な面持ちで川の方に向き、幼い見た目の割りには落ち着いた声で淡々と声を出しました。
「わたし、意識が朦朧としながら気付いたの。女神様がわたしを救ってくれたって、ここまで運んでくれたたって。ありがとう、女神様」
すると、なぜかさっきまで感動の涙で蒸せていた女性の顔が一変、氷のように冷たい表情になりました。どこか、思い出したくないことがあるようにもみえました。
「神なんてこの世にいないわ。そんなことも分からないの?私はあんたをそんな出来損ないに育てた覚えはないよ」
女性は、少女を冷徹な口調で戒めます。
「すみません。以後気を付けます……」
少女は、女性の言葉に慣れたような口調でぼそりと呟きました。
少女の顔は諦めたように無気力な表情と底知れない苦悩とが入り混じっていました。
「フフフ……」
『善神』は笑ったような声を出しながらその光景を見ていました。そこには表情が欠落した彼女にしては強い感情が浮かんでいました。
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