-兄ト妹-

6/21
前へ
/54ページ
次へ
どうやらツボに入ってしまった様子の桃子をみて、ほんのり耳を紅くさせた顕太郎が桃子の額を指で軽く弾いた。 「笑いすぎだ!邪魔じゃなく手伝え!」   「冗談だよ!冗談!!」 顕太郎に軽く弾かれたおでこを片手で覆いつつ、顕太郎を宥め言い聞かせると、顕太郎は桃子の隣に座り、懐から煙草を1本取り出し口に銜え火を点けた。 カップから入れ立ての珈琲の香りがする。 その香りに誘われるように、思いっきり吸い込むとカップに口をつける。 「そういや大樹君だっけか。元気なんか?」   顕太郎は1度も大樹と面識がない。 母の凛香とは、以前1度だけ会った事がある。 会ったと言っても、偶然顕太郎の描く漫画のファンだった凛香さんが、桃子の叔父が顕太郎と分かると、わざわざ顕太郎の家を桃子から聞き出しサインを強請(ネダ)ったという過去があるためだ。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

221人が本棚に入れています
本棚に追加