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桃子は、顕太郎の手を取り、力ない声でそう答えると本屋後にした。
体調のすぐれない桃子を気遣い、本屋の後に行く予定だった食事をパスし、そのまま顕太郎の家へ2人で戻った。
顕太郎は玄関で靴を脱ぐと、玄関先で下を向き俯いたまま、その場に立ち尽くしている桃子に目をやった。
今にも泣きそうでいて、蒼白した桃子の顔に顕太郎はどうして良いのかとたじろいでしまう。
「桃子…顔まっ青だぞ、大丈夫か?」
桃子はどこか淋しげに力なく笑う。
「久しぶりに街に出たからちょっと気分悪くなちゃったのかなぁ。もう大丈夫だから…」
顕太郎に心配掛けまいと気丈に振舞う桃子を見て、顕太郎の心が痛む。
「叔父さん、ごめん。私そろそろ帰るね」
「おい、桃子!!ちょっとま…」
桃子は顕太郎の言葉を最後まで聞かず、走り去る様に顕太郎の家を後にした。
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