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桃子は顕太郎の家を出ると、自分でも気付かぬうちに、自宅まで全力で走っていた。
帰りついた時は汗だくで、桃子は、肩で息をしながら家の前で立ち止まった。
息を整え家に入ると、大樹はまだ帰っておらず、桃子はそのまま階段を駆け上がり自分の部屋へと入った。
電気も点けず暗がりの中、ふと先ほど大樹に掴まれた腕に目が向いた。
さっき、大樹が、この腕をしっかりとつかんでいた力がよみがえり、その感触や温もりがまだ残っている気がする。
思い耽る桃子を余所に、聞き慣れた携帯の着信音が静かな部屋に鳴り響く。
桃子は、ごそごそと鞄の中から携帯を取り出すし、携帯のディスプレイに目をやると、
着信は叔父の顕太郎からのものだった。
「もしもし…叔父さん?」
「おう、桃子。
もう家に帰り着いた頃だろ。
さっき顔色悪いみたいだったけど、気分はもういいのか?」
「うん、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「大丈夫なら、それでいいんだ。
突然帰るし…。
それに、さっきのお前の様子も少し気になったから」
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