いつもの日常

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社会人3年目。そこそこの企業に事務として就職し、そこそこの仕事をこなしてきた。そして実績。信頼。がある。 仲のいい同僚と、それなりにバカいいながら、楽しくやってきた。 はず。 仕事は楽しい。嫌な客も、嫌な上司もいるが、上手くかわしてきた。 友達と、お酒飲みながら騒ぎ、ちょっとハメはずして赤面っていうことも 一度や二度じゃない。 未だ同居の家族とも、一緒に旅行したり、仲がいい。 別に、今の現状に不満があるわけでもない。 問題といえば、友達が次々と結婚し、子供が生まれ、子供の成長に驚き、癒され、微妙にジリジリと確実に追い詰められていく事ぐらい。 あとは、ちょっと刺激が欲しいかな。 いつもの仕事をこなし、タイムカードを押す。 「永峰 みづほ」。わたしの事だ。なんの変哲もない、普通の名前だ。 年賀状などでたまに「みずほ」「瑞穂」と間違えられるぐらいで、不満も満足もない。 「お先に、失礼いたしま~す」 タイムカードを戻し、事務所の中の面々に挨拶する。 口々に皆、挨拶を返してくれた。ちらっと見た席の男はまるで無視だ。 感じ悪いと思いながら、他部署の上司で関係ないし、いつもの事なので、そのまま下駄箱から靴を出す。 表に出ると、日差しが少しきつかった。 6月で梅雨入りしているのに、なんだろうか、この暑さは。 軽くため息をつき、歩きながらスマホの液晶を入れる。 __変化なし。 いつもの待ち受け画面から何も変化がない。 画面のなかで飼っている熱帯魚が右へ左へ移動するばかりだ。 すると、ゆるい風にのせて、男の声が聞こえた。 振り向くと、自称身長183センチの鼻筋が通った華やかな感じの男だった。 (微妙な3センチの違いが私にはわからない) 「増川さん」 うちの課の係長だ。 「今、帰り?」
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