10. 輝く時の中で

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年明け。 朝美達との約束通り、私達は初詣に来ておみくじを引いていた。 「あ~あ、今年は悲しき受験生だな~、昂介」 そうこぼしながら、ガサガサと沢田先輩がおみくじを開ける。 「うおっ、やったね大吉!」 「俺も大吉」 「あたしは……小吉? 微妙! ひかりは?」 「えーっとね、……うそ、凶だよ」 細長い紙の真ん中に、でかでかと凶の文字があり、がくん、とうなだれてしまう。 「凶!? ついてないな~、桃瀬!」 あははは、と高笑いをする沢田先輩をキッと一睨み してから、私は速攻で高い場所にそのおみくじを結ぼうと手を伸ばした。 「貸して」 背後から昂くんの声と共に腕が伸びてきて、1番高い位置にそれを結びつけてくれる。 「……俺が大吉だし、一緒にいるひかりも大丈夫だろ」 そう言って、ぽん、と頭に手を置いてくれる。 昂くんの優しい微笑みに、おみくじのせいでささくれだった気持ちが癒されて、ほんわかした。
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