10. 輝く時の中で

9/23
前へ
/358ページ
次へ
春めいてきたその日は、見てると少し切なくなるくらいオレンジ色が輝く、夕焼けのとても綺麗な日だった。 「大学行ったら、サークルとか入るの?」 「んー、そうだな。何もしないのもつまんなそうだし。弓道のサークルなんてあったらいいけど」 「野球は?」 「大学で野球やってる奴らなんて野球バカばっかりだろ。無理無理!  でも、たまにはやりたいな、真司たちとでも」  笑って言う昂くん。  私も野球をやる昂くんを見てみたい。 「俺はようやく終わったけど、ひかりはこれからだもんな、受験」 「う…… それは言わないでよぉ」 これから始まる地獄を想像すると気が滅入る。 しかも傍に昂くんはいないなんて。やっていけるのか、私。 「ははっ、ごめんごめん。大丈夫だよ、ひかりなら。頑張り屋だろ」 「そうかなぁ……」 急に不安になってきて、俯く。 沈黙が流れたかと思うと、ふいに昂くんが私をそっと抱き寄せて唇を重ねてくれた。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

607人が本棚に入れています
本棚に追加