聞いてほしいのです。

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「私の家は古くから続く家系で、 生家は田舎にありますが、 今までずっと、皆そこで暮らしていました。 今の家族は、祖父と父親と、叔父が二人。 それと私と、従兄弟が三人。 従兄弟のお嫁さんが一人です。 ……わかりますか? 男性ばかりで、女性が極端に少ないんです。 その理由は、家に伝わる話にあるんだと、私は思っています。 その話と言うのが、私が誰かに話したかったものなんです。 ……昔、私の先祖にあたる男に、大層惚れこんだ女が居ました。 だけれど、その男には、すでに婚約相手が居たのです。 男を諦められなかった女は、ある呪いをかけました。 『結婚する女はすぐに死ぬ。添い遂げる事は出来ない。この家の女は皆死ね。』 そんな呪いです。 嫁いだ女性が亡くなったら、 その妹が嫁ぐ事も珍しくなかったので、そんな事も無いようにと、男に呪いを。 見事に成功したその呪いのせいで、 男は婚約者と結婚しましたが、後継ぎが生まれるまでもなく、相手は亡くなりました。 悲しみに暮れる男に、女は尽くしました。 その内に男本人よりも、周りの親族に見初められ、女は男と結婚します。 だけど、呪いはきれていなかった。 その女は、呪いは解かなければ消えない事を、知らなかったんだと思います。 自らかけた呪いで、 女もまた、命を落としたそうです。 唯一違ったのは、それが子供を産み落とした後だった事。 呪いをかけたと知っていたのは、 本人である女と、彼女の書き残した日記を読んだ者だけ。 その日記も、見つけたのはずっと後世の人間で、 その頃にはもうすでに女の生まれた家は途絶えており、呪いの全容は解りませんでした。 だから解けずに、ずっと残ったままだったのです。
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