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息を整えながら近くの壁に寄りかかる、戦闘の気配を感じ取ったのだろう。
遠くから化け物が歩いてくるのが見えた。
「まだ…まだ終わってない…」
譫言のように呟きながら体中から霊力を絞り出す。
もう一度風の刃を……
そう念じて接近する化け物に腕を振るう。
「…っ」
しかし何も起きない、最早絞り出せる程の霊力も残っていなかったようだ。
「…ははっ……」
何だろう…呆れを通り越して笑えてくるというか…恐怖とかそんなモノは浮かんでこなかった。
ただ呆然と目の前まできた化け物を見上げる…。
四つ足で歩いてきたソレは私の目の前に来ると前足を振り上げ…私に向かって振り下ろしてきた。
「二連…魔撃っ!!」
前足が振り下ろされる所を呆然と見ていた私の目には化け物が何者かの攻撃によってその体を曲げて吹き飛んでいくのが映っていた。
「全く…久々に故郷に戻ってきたと思ったら…一体どんな状況よこれ。ほら、大丈夫春香?立てる?」
手をパンパンと払ったあと此方に手を差しのばす女の子。
綺麗な黒髪とツインテールが特徴のその子は『炎煌の巫女』と呼ばれている……
「…紅葉ちゃん……?」
……私の一番の親友だった。
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