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「あの子、辞めてしまったんです。見た目も性格も申し分無い本当に良い子だったから、私達も寂しくて……」
「や、辞めちゃんたんですか？」
「ええ。何人かのお客様にも聞かれたんですが、ショックで倒れそうになる方や、ファンと思うような子達がいきなりわんわん泣き出してしまって」
それらの場面の想像は容易にできる。
「そ……でしたか。とても良くしてくれた少年だったので、残念です」
「何も悪いことをしてないのに、真面目な子だったから……」
「えっ？」
何かを想像してるのか顔を曇らせ、含みのある言い方をしているように思う。
その物言いが引っかかり聞き直してみたかったが、俺の後ろのお客さんがドスンとかごをレジ台の端に置いたので『ありがとうございました』と言い去ることにした。
「はあ……やっぱり辞めてしまってたのか」
もうよほどの偶然がない限り、会える可能性はほぼない。
「あの笑顔を見たいな……」
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