3章 : 事件

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しばらくするとパトカーが何台も到着し、学校を取り囲んだ。大勢の警察官が教室に入ってきて、ぼく達はあっという間に追い出されてしまう。当然、授業どころではないので本日は休校となり、生徒には帰宅命令が下される。誰かに今回の事を聞かれても、何も答えないようにと学園長から釘を刺された。 しかし、ぼくは真っ直ぐ帰る気になれない。学校が見える少し離れた場所に座り、頭の中を整理してみる。 死亡したのは、やはり乾先生だった。屋上から飛び降りたと考えて間違いないが、遺書などはなかったらしい。生徒との交流がうまくいかず、最近は悩んでいる様子だったというのは学校側が用意した後付けだろう。1-Bのクラスメートだけが、死の原因、その理由を知っていた。 『ルール違反により、罰は下された』 ルールを作成し、ぼくが『黒幕』と呼んでいる人物が乾先生を屋上から突き落とし、殺害したのだろうか? まさか、そこまでするなんて…… 今頃になって、このルールがとんでもなく恐ろしいものだと気付く。なんで皆は嫌々でも従っているのだろう、理解に苦しむと先程まで思っていた。そう、ほんのさっきまで。今、ぼくは恐ろしい。何より、ルールを破る事が。 「ねぇ、ちょっといいかな。君って来栖高校の学生だよね」 頭を抱えていると、突然声をかけられた。いつの間にか、ぼくの正面に見知らぬ男性がカメラをぶら下げて立っている。 「おっと失礼、自分はこういう者なんだけど」 懐から1枚の名刺を取り出し、ぼくに渡す。そこには『週刊ZOOM 記者【矢島 和明(ヤシマ カズアキ)】090-XXXX-XXXX』と書かれていた。 「時間とらせないからさ、少しだけ話を聞かせてよ」
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