Epilogue

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目が覚めて半身を起こすと、着ていたシャツが体にまとわりついている事に気付いた。心臓が早鐘のように鳴るので、大きく息を吸い込んで落ち着かせる。 ……なんて夢だよ……くそっ…… 額の汗を腕で拭い、喉の渇きから立ち上がろうと試みた時―― 自分の隣が空いている事に、ようやく気付く。 ……トイレにでも行っているのだろうか。 そんな折、玄関の方から控えめな音が聞こえてきた。扉の音である。 ……? こんな時間に、なんだ? 足音を消すように、ゆっくりと寝室から出る。ウチは6畳の寝室を開ければリビングと台所があり、そのまた奥に短い廊下が続き浴室、トイレと並んでいる。現在はリビング、真っ暗で誰の気配もない。 音がするのは、どうやら浴室のようだった。静かに扉を開けて廊下を進んでいく。彼女を驚かせようとか、そんなつもりは毛頭なかった。しかし何故だろうか、なんとなく……気付かれてはいけない予感がした。 床を歩く、ギッギッという僅かな音が今は煩くさえ感じる。浴室に灯った電気、その様子をこっそり覗くと…… 彼女は手を洗っていた。2人でベッドに入った際は寝巻きだったはずだが、地味なフード付きの服に着替えている。季節は初夏、だいぶ寝苦しくなってきたこの時期に、何故そんな恰好を? 家の近くにコンビニはある。ちょっと立ち寄ろうとして、特に意識もせずそこら辺の服を羽織り出かけただけかもしれないじゃないか。ぼくは何を疑っているんだ……? バシャバシャと水を弾く音は続く。随分と丹念に手を洗っているな……そう思って目線を向けると…… 流れていく水が、赤く染まっている事に気付いた。
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