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署に戻り、仕事を終えた頃には深夜になっていた。当然、自分1人しか残っていない。別に自分だけが多く仕事を割り振られている訳ではなく、パソコンが全く出来ない岸和田さんの為に資料を作成したり、他の奴らの尻拭いをしたりと……まぁ、そんな感じだ。そういう事が実を結び、今回の昇進へ繋がったのだから全くの無駄ではない。何より、ぼくはこの仕事に誇りを持っている。
あとは彼女が、ぼくの言い訳をきいてくれるかどうかだな……
帰り支度をして、警察署から出る。じめっとした生温い空気が、倦怠感を増大させる。早く帰ってシャワーでも浴びたい所だ。
駐車場に止めてある自分の車に向かった際、鍵を持ってくるのを忘れている事に気付く。署の机に入れているのは分かっているのだが……
ここで日中の大瀬良を思い出す。筋力の衰えを実感するにはまだ早いが、日々鍛えておかなければいざという時に困る。
少し考えて、ぼくはタクシーが拾える所まで歩こうと決意する。あくまで家まで走って帰ると言わない辺り、ぼくらしいなぁと思いつつ。
軽い屈伸運動を行い、気合いを入れて歩き始める。
――この時は、ほんの気まぐれだったという他ない。しかし……
その気まぐれが、ぼくの悪夢を呼び覚ます結果となる――
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