Epilogue

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深夜の大通りを歩いていると、不意にどこかから音が聞こえた。 何か大きなものを落としたような音。最初は野良犬が餌を荒らす為にポリバケツでもひっくり返したのかな、くらいに思っていた。しかし―― 風に乗って、僅かながら臭いがした。それを嗅いだ瞬間、ドクンと心臓が高鳴る。これは……この臭いは…… 周囲を見渡すと、路地裏に続く細い道が見えた。街頭もなく、闇に包まれた場所……この先に、何かが『ある』第六感が、そう告げていた。 今の自分は、当然丸腰である。一応、柔道も警察で習ってはいるが実践に応用出来た事は未だにない。 ふと見れば、近くのビルは建設中の様子。近付いて中を覗くと、丁度よい鉄パイプが積まれているのが見えた。これは……武器として使える。 だが当然、相手に振るうような真似はしない。あくまで自衛の為、そして牽制の意味をこめてだ。 ゆっくり、足音をたてないように路地裏を進んでいく……奥へ向かう度に臭いは強くなり、そして不気味な音が聞こえてくるようになった…… 額から流れた汗が、頬を伝って地面に落ちる。落ち着け……落ち着け……! こんな状況は、過去にもあったはずだろ……! 経験してきているはずだろ……!
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