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――電話で連絡を受けた岸和田は、直ちに現場へ急行した。
裏路地に足を踏み入れた瞬間、すぐに只事ではない事に気付く。それでも一歩一歩進んでいくと……変わり切った自分の部下の姿を発見する。
「…………柏木…………」
名前を呼ぶが、反応しない。虚ろな瞳で、生気が感じられない。
ただ黙って、婚約者の遺体を抱きかかえていた。
狭い空間は血で汚されていたが、そんな事は構わず岸和田は柏木の傍に寄り、膝を地面につける。
「…………柏木…………!」
今一度、名前を呼ぶ。すると微かに唇を動かし、こう囁いた。
「…………岸和田さん……ぼく……なんです……
来栖事件の犯人……あれって……ぼく……なんですよ……
今起こっている連続殺人も……全部…………
ぼくは……彼女を…………美空を…………この手で…………
ぼくを、殺して…………殺して、ください…………殺して…………」
岸和田は、目に涙を浮かべながら……力強く柏木を抱きしめた。
「…………馬鹿野郎……ッ! 馬鹿野郎が……ッッ!!」
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