1章 : ルール

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来栖高等学校は都内でも有名な私立高校である。卒業までの3年間にかかる学費の高さもさることながら、会社経営者や政治家、芸能人を親とする生徒が全国で最も多い事も理由の1つとして挙げられた。 しかし、どんな事象も例外はあるもので、ぼく【柏木 悠真(カシワギ ユウマ)】の両親は会社を持っている訳でも政に関わっている訳でもテレビに出ている訳でもない。ごく普通の家庭に育てられた一般人である。 では何故セレブ高校にやってきたのかと言えば理由は2つ。ぼくの母親は看護師をしているのだが、数年前に飛行機内で持病を発症させた乗客を、偶然にも救った事があった。その救われた乗客こそ、来栖高校の学園長だったのである。実際に処置が遅れていれば命の危険もあったとして、学園長は大変感謝したらしい。 「貴女は命の恩人だ。何かお困りの事があれば、いつでも仰ってください。必ず協力させて頂きます」 学園長はそう言って連絡先を渡してきたが、母親は当たり前の事をしたまででお礼を受けるつもりなど毛頭なかった。 しかし状況は変わってしまう。ぼくの父親が急な転勤を言い渡されたのである。それが2つ目の理由でもあるのだが、6月という中途半端な時期の高校転入は困難を来した。自慢するつもりではないが、ぼくは中学から学年トップの成績で、両親としてもなんとか高校で勉強をさせてあげられないか悩んでいた。そして、藁にも縋る気持ちで学園長に協力を仰いだという訳である。 転入試験を満点に近い成績で突破した後、晴れてぼくは特待生として来栖高校の門をくぐる事を許された。あまりにも出来過ぎたシンデレラストーリーに、ぼくも両親も未だ狐につままれたような気持ちでいるのだが。
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