XVIII

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…だからさ、薫の死はショックだったよ。 しばらく高熱を出して寝込む位にね。 人の死なんて初めての経験だったし、『あんな約束したから…』って、誰にも言えずに自分を責めてね。 夜中にうなされて眠れない日も続いたなあ。 …でもさ、その後の出来事の方があまりにも大きくってさ、薫の事は存在すら忘れてしまったんだ。 大人の事情なんて、なーんにも知らなかったからさ。 何故、お前だけ連れてあの女が出て行ったかなんて、知る術も無かった。 わざわざ教えてくれる人もいなかったしね。 …取り残された俺は、自分が何故、こんな目に合うのか知らないまま、俺を捨てたあの女を恨んで生きるしかなかったんだよ。」 そう言って尊は身体を起こすと、再びタバコに火を着けた。 母を恨んで生きて来たと言う事実を聞いて、なんの疑いも無く尊を信じてしまった自分の甘さに気づかされた。 本来持つであろう人間の感情に目を向けず、優しい表面に騙され、家族として尊を向かい入れてしまった己の愚かさを呪った。 今更後悔したところで現実は変わりはしないのに… 「…お前を見た足で、埼玉の叔母を訪ねたんだ。 大学教授に嫁いだ彼女には、親父からの恩恵なんて関係無いからさ。 勿論、佐橋家を訪ねた事も、お前に会った事も内緒にしてさ、『母親と弟に会いたい。』って言ってみたんだよ。 案の定、彼女は俺を止める為に、全部話してくれたんだ。」
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