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「でもアバターにするなら先にこっちかなぁ……」
高山はもう一枚のラフに手を伸ばす。工藤はやっぱりという表情でそちらに視線を投げると、
「まぁ、有名ですもんね、ヒンドゥ教の神サマたち」
「うん。姫川君の絵はアレだけどね」
「うん、アレだけど」
「……工藤、じゃあ頼むぞ」
顔文字で表示すると『(;ε;´)』こんな感じだろうか。姫川はその顔を貼り付けたまま、自分の席に戻った。
そんな姫川の様子を高山が笑いながら見ていると、工藤が近づいてきて、彼女の耳元で囁いた。
「先月だったかな。姫川、彼女と別れましたよ」
その言葉に一瞬、高山の顔が紅潮したかのように見えたが、すぐに色は消え、冷たい視線を工藤に向ける。
「それで?」
平静を装おってはいたが、その声は動揺からか、思わぬ棘を含んでいた。高山は咳払いで誤魔化す。
「なーんでもー」
そんな棘など気にもならないというように、工藤は茶化すような返事を返すと、彼もまた自分の席に戻っていった。
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