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「全く……」
高山は、薄く頬を染めながら、口の中で小さく呟く。と同時に、社内で一番鈍そうな工藤に、いつ気付かれたのかとも考えていた。
いつ頃からだったろうか。高山は姫川に対して特別な想いを抱くようになっていた。しかしその想いを口に出せないまま『叛逆のデスペラート』がスタート。メインプログラマーでありチームリーダーの高山は、その立場も相俟って、自分の気持ちを伝える事を諦めたのだ。
いや、姫川に彼女がいる事を知っていて、砕ける事が分かっていながら告白など出来なかった、臆病な自分への言い訳だろう。
だからといって、今まで誰とも付き合った事がない訳ではない。恋愛遍歴は人並みにはある。だが、そのどれもが長くは続かないのだ。
以前は結婚を急かしていた彼女の親も、30を超える頃には諦めたのか、何も言わなくなっていた。彼女自身、結婚に意義を見出だせなかったので、この事に関しては肩の荷が下りた気分だった。
だが工藤はどんなに誤魔化しても、飄々とした態度で核心を突いてくるのだ。
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