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「乾杯!!」
賑かな店内。カウンターには十席程の椅子、その周囲には座敷が数席設けられ、同じ店名の書かれたエプロンを付けた店員が数名、忙しそうに走り回っている。そこは一見さんでも入りやすい、リーズナブルな居酒屋だろう事が、一目で分かる。
そんな居酒屋の、少し奥まった場所にある座敷に、彼らはいた。男性二人と女性が一人。
お祝いの席か何かだろうか。三人共に心からの笑顔を浮かべ、何度目かになる乾杯をしている。各々のグラスを満たしていただろう琥珀色の液体は既に半分以下になり、一人は目の縁が赤くなっている事から、最初の乾杯でないだろう事はすぐに見て取れたのだ。
「もう……っ、ほんっとーに僕ぁ嬉しいんれす!」
目の縁を赤くしている男性が、呂律が怪しくなりながらも、これまた本日、何度目かになる台詞を吐く。
「僕たちのプ、プ、プロジェクトぅが、認められれれ」
「もう、飲むといつもその話なんだから。まだまだこれからよ、工藤君。そんなに興奮しないの」
「ら、らって、高山しゃーん!!!」
工藤と呼ばれた男性は泣き上戸なのだろう。最後は泣き声になりながら、女性に抱きついていく。彼女は苦笑しながらも、まるで子供をあやすかのように工藤の背中を優しく叩いた。
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