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「おふぁーあぁぁあぅ、ざいまーす」
そんな、欠伸だか挨拶だか分からないものと共に工藤が会社に現れた時には、高山と姫川は既に仕事を始めている様子だった。工藤は近くに行き、二人の前のブラウザを覗き込む。
「早いですねぇ。……でも何してるんですか?」
工藤の視線の先には、いつも見慣れた『叛逆のデスペラード』の管理画面ではなく、見た事のない画面が表示されていたからだ。意味を持たない静止画の連続。工藤はその意図を汲めないでいた。
「これが例の電子ドラッグなの。って、工藤君はさっさと潰れちゃってたから、もう一度説明するわね」
高山が、そんな工藤に答える。
「電子ドラッグっていうのは、一見すると何の意味も成さない画像や音なの。でも、画面の明滅や色彩にある規則性を持たせたり、特定の波長の音を組み合わせたりする事で、それを受け取る側に通常のドラッグと同じような常習性を与えられるの。恐らく、視覚、聴覚といった媒介を通って、脳に作用するんだと思うわ」
「はぁ」
工藤は理解してるのか判断しかねる、曖昧な相槌を打った。しかし高山は気にせず、先を続ける。
「そのパターンや組み合わせに因って、どういった効果を引き出すのか、解析する事で分かるんじゃないかな、って考えたの」
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