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「さて、ご飯を作り……食材ありましたっけ?」
バックパックの中の食材を取り出してみます。
「やはり、こう言うときは……お肉、でしょうか?……あらら」
少し干し肉があるだけです。困りました。
「よし、狩りに行きましょう!」
エルフの皆さんもお肉は食べるみたいですし。現状、結界の外で狩りをすると言うのが難しいみたいなので野菜を食べているみたいです。弓の達人と魔法のエキスパートが多いエルフさん達は、逆に近接戦闘が苦手みたいで詠唱時間を稼ぐのが大変なのだとか。
昔は父さんが前衛で戦ってくれたんだけどね。そうアシュリーさんが俯いて言っていた。
『我が美しき主、どこかへ出掛けるのですか?』
「はい、狩りに」
『狩り……今からですか!?』
驚いた様子です。太陽はとっくに沈んで、月が輝いている頃です。月の化身を呼び出すのですから、こんな時間に儀式をするのも頷けます。
「はい」
『お供します』
「けれど、ニルは」
『いいえっ!!我が美しき主!!お供します!!』
乗れと言う風に首を背中の方に向けて振るので、表に出ました。いつものようにニルに跨がると。
「セルリア……どこに行くのっ」
「あっ、レイチェル」
「逃げるの?」
涙目のレイチェルが怨めしげに低い声を出します。そうですよね、儀式が失敗に終わった直後に馬に乗っているのですから。
ここは事実をお伝えします。
「お肉を調達しに行きます」
「お、お肉?」
「はい。こう言うときにこそ、しっかりご飯を食べて、しっかり休んで前に進むんです。お野菜は美味しいです、ですが!力を付けるにはお肉なのです!!」
「あ……うん」
レイチェルがキョトンとしています。
『小娘、我が美しき主を信じよ』
「う、うん……でも、でもさぁ、言い訳お肉って」
「レイチェルは食べたくないですか?お肉」
「うーーん、もう何年もちゃんと食べてないから、食べたいかどうかと聞かれたら、食べたいかも……」
「なら張り切って調達してきますね!」
「なんか、スゴい元気だね、セルリア」
「空元気でも、沈んでしまうよりマシかなと思うんです。誰か独りでも明るく居てくれたら引き摺られて明るくなれるものです」
マスターがいつも明るく引っ張って下さるから、元気になれますし、そこに自然と人が集まる。
「暗く沈んだ空気の所より、明るくて楽しい所の方がルーンドラゴンさんだって遊びに来たいと思ってくれるじゃないでしょうか?」
「すごいね……セルリアは」
「すごくないですよ。僕はもっとすごい人を知っていますから。どんな絶望的な状況でも絶対に諦めない方です。だから、いつも良い風が吹くんです」
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