ジュウロク

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 沢山襲ってきたもふもふの豚さん達が今は一匹も姿を見せない。しきりに鼻を鳴らして騒々しかった渓谷は不気味な静寂に包まれた。 「……なん、ですか?」  その時、ぞわりと身の毛が粟立つ様な感覚。  真っ暗な岩場の向こう。何か居ます。 「セルリア、どうしたのーっ!?」 『我が主っ!早く背に』  どうやらニルも気がついたようです。 「……間に合いません」  急速に迫る巨大な気配。 「ニル!!この場を離脱して下さい!!」 『な、何を馬鹿な事をっ!!我の身も心も全て御身に捧げ』 「今、貴方にしかレイチェルを護れない!」  来ました。巨大な、豚さんです。あれ?猪さん? 「四つ角のイノシシ……ゴリアテボア!マリッツァボアと対立してる種族だよ!そんなの敵わないよ!!セルリア逃げてっ」 「同系列のモンスターでも対立してしまうんですね」  ただ、もふもふなマリッツァボアとは相反し、鋼のように黒光りした針のような体毛が巨大な全身を覆っている。流石に頭部の体毛は短いけれど、口からは鋭い牙が数本突き出ていて、そして、余りに特異な禍々しい黒い角が四本。  対立と言うより、蹂躙されているのではないか、その位にこのモンスターは強大なようです。  ウィークリサーチが発動しない。
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