ジュウロク

8/138
前へ
/1227ページ
次へ
「ブォオオオオオッ!!!!」  巨体から繰り出されたのは、空気全体を震わせる程の爆音、低く目の前の生物を圧倒する咆哮。鼓膜が破れそうです。 「つっ……なんて大きな声なんですか」  ニルも首を左右に振って、少し飛行が安定しない。レイチェルも怯えた様子でギュッとしがみついていた。 「威圧効果をもたらす咆哮。厄介なスキルです……」  ギリギリ効かないレベルだった。そうでなければ。 「アクセラレート!」  加速の魔術掛け、真っ直ぐに駆けてくるゴリアテボアの体当たりをかわす。一瞬でも立ち止まってしまったらお終いでした。 「わぁ……あんなに大きな岩がバラバラですっ」  あんなのを食らったら一溜まりもありません。  飛翔魔法で脇をすり抜け、後ろに回る。恐らくこの手のモンスターは前にしか進まない。けれど、その巨体に反し恐ろしく素早い。 「尻尾もなかなか凶悪です……」  ヤマアラシのようにトゲがびっしり生えた尻尾。先っぽはにゴツゴツした塊がついていてまるでフレイルのよう。  先に厄介そうな尻尾を切り落とします。魔力を練り、クラウ・ソラスに纏わせ飛ぶ。 「はぁっ!!」  ギィンと言う金属音が鳴り響き、剣が弾き返された。 「硬いっ」  僕の膂力では傷を付ける所か全く刃が入らない。 「セルリアっ!!」 「レイチェル!早く逃げるんですっ」  果敢に弓を射るレイチェル。効果がないのは分かっているはずなのに。いけません、あちらにターゲットが移動してしまう。
/1227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5710人が本棚に入れています
本棚に追加