ジュウロク

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 きっとそう仰る。 「こんな所で死ぬ訳にはいかないんだっ!!」  ふと身体が軽くなった。魔力がまた全身に漲る。 「クラウ・ソラス?」  握り締めた剣から光の魔力が流れて込んで来た。これなら行けます!  そして、じりじり押し返し始めたその瞬間、2つの魔力が爆ぜた。闇の魔力と光の障壁が一瞬収縮し爆発、猛烈な爆風が巻き起こった。 「ブォオオッ!!」  強い光に視界が真っ白になる。一瞬死んでしまったのかと思いましたが、頬を小石が掠めたのか痛みを感じたので多分死んでないと思います。 「くぅ……」  髪留めが飛んだのでしょう、後ろできつく縛っていた髪の感覚が変わった。光が収まるのを待ち、目を開く。  ニルはさっきの場所には居なかった。けれど、彼との契約、繋がりはまだ解けていない。遥か頭上に光の魔力を感じるので、上空に逃れたのでしょう。  レイチェルを護る為に。それに、きっと信じてくれたのでしょう。僕のことを。 「ブォォオオオオオッ!!」  強い光に目を回しているのか、ゴリアテボアは起き上がろうともがいている。怒りに針のような体毛を立てながら。 「クラウ・ソラス。僕に力を貸して欲しい」  輝光の剣は先程と少し姿を変え、今その名に違わない光の魔力を湛えていた。銀の刀身はその内部に様々な色の光を写し出して、とても美しかった。 「傲るつもりはないんです」  僕に課せられた使命。 「けれど、僕は僕の大切な人達のその全てを護りたい。そして、マスターのように明るく道標となる光になりたい」  勇気と無謀は紙一重なのかもしれないね、アシュレイ。少し彼の勇敢さが羨ましい時もあった。  けれど今は立ち止まってはいけない。 「僕は、英雄にならなければならない!」  一際強く暖かくクラウ・ソラスが輝き、また身体に魔力が流れ込んでくる。そして、何というのでしょうかその魔力と僕の魔力が混ざり合って馴染んできたんです。 「行きますよ」  僕の声に呼応するように刃が煌めいた。一歩踏み出すと、その感覚に驚きました。  剣が今までにないくらい軽い。魔力を全身に纏うのもずっと速く力強い。 「はぁああっ!!」  漸く起き上がったゴリアテボアの首筋を一閃。 「ブギッ!!」 「おやすみなさい」  ゴリアテボアの首が転げ落ち、身体が地響きと共に倒れ伏した。 「ありがとうございます」  一振り横に剣を凪げば血糊の一つも付いていない。師匠がもっとレベルを上げなければ駄目だと言った理由が今なら解ります。  この剣はとんでもない量の魔力を内包しています。そして、意志を持っている。人が剣を選ぶのではなく、この剣自身が使用者を選ぶんですね。今回は力を貸してくれた。けれど、毎回頼りきりになるわけにはいかない。  もっと頑張らなくては。 「すっげーーーーーッ!!」 「れ、レイチェル!?わっ!!」  そんな事を考えていたら、レイチェルが上から降ってきました!
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