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「ピキーーーッ!!」
「プピ、ピキーーーッ!」
あちらこちらで会話をしているかのようなマリッツァボア達の鳴き声が響きます。
「なんか、怖いよセルリアっ」
しがみついてくるレイチェル。もふもふのぬいぐるみのような豚さんがひしめき合っている姿はちょっと可愛い、などと呑気に考えてしまうのは多分疲れていて頭が働いていないからなのでしょう。
触ればきっと硬い剛毛なのですから。彼等はぬいぐるみとは全く別物、モンスターなのです。
「ピキーーーッ!!!!」
遠くから一際大きなピキーーーッが聞こえました。すると一斉に鼻を鳴らすマリッツァボア達。
ただ、襲いかかってくる様子はないんです。
「ビィイーーッ!!!」
何でしょう、一匹の鳴き声で皆静かになりました。物凄く通る声です。
「……ねぇ、セルリア、なんか」
「はい」
ちょこちょこと短めの脚でバックしながら一本道の様なものが出来上がり、その奥から現れたのは。
「うっわ……」
レイチェルの少し引いた声。のそりのそりと歩み出て来たのは、少し大きい豚さんでした。いえ、正確には猪さんなのですが。
「金ピカだ」
「光っていますね~~」
夜空に浮かび上がって見えるほどに金色の輝きを放つ。
「なんだあれ……」
「さ、さぁ……。図鑑でも見たことありません……」
サポートモンスターにあらかじめ記憶されているモンスター情報にもありません。
「ウルズソーンハガル、オゼル」
「しゃ、喋った」
何を言っているか分かりませんが鳴き声とは明らかに違います。
「ちょ……っと待って!これエルフの古い言葉」
「解読出来ますか?」
「我々は……襲ってきた、家族、恐怖……うぅ~ッ!古過ぎてわかんない!!」
レイチェルが頭を抱えています。
『……おい、豚。普段通り話せ』
「ニル、余り高圧的な態度は」
『なに、もしもの事があれば我が光よりも早く駆けてみせる』
フンッ!!と自信満々に鼻を膨らませました。そこに歩み寄り、金色の豚さんは一つ鼻を鳴らした。
「ヒッ……ピキッ!ピィピィ!」
そんなニルに気分を害した様子もなく、金色の豚さんは喋るように鳴いて見せた。当然何を話しているか分からない。
『ほぅ、ほぅ、なる程』
ニルにはわかったみたいなので、翻訳をお願いしました。
『マリッツァボアとゴリアテボアは食糧などの問題で度々衝突していた。そのせいもあり個体数の激減を招いた事により、長が約定を取り決め、この厳しい環境下で棲み分けをし生き長らえてきた。しかし、いつからかあの個体がその約定を破り、縄張りを侵略し多くの同士が死んでいった。だが、あの個体を倒せる者は居ない。困り果てていたところに、貴方様が現れたのです。と』
「賢いんだな、コイツ。光ってるだけあって」
光ってるのが関係あるかは分かりませんが、賢い豚さんです。とは言え、この金色の豚さん以外は言葉など発せない様子。ここまでの知力を持つ個体は僅かなようです。
その僅かな個体が種を存続させるために棲み分けを行った。すごい事です。
『貴方は我々の英雄です!だそうだ我が主よ』
マスター、僕豚さん達の英雄になりました。
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