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「はぁ………はぁっ…」
見渡す限り続く砂漠。少女が纏う黒い外套は砂まみれ。
しかしフードから覗く赤い瞳は力強く、歩みを止める事は決して無い。
頬を滴る汗を拭い、煩わしかったのかフードを払うと金色の長い髪が靡き白い肌が露わになった。
「ま、まだまだって事ね……上等じゃない…」
整った顔立ちを歪ませ口元を軽く引きつらせる少女はせめて水分を持って来るんだったと自分を呪った。
「はぁ…はぁっ…絶対に……!!絶対に諦めないんだからぁっーーー!!」
彼女の名前はエリザベス・アレクサンドラ・アリス・ウィンザー、17歳。
長い名前にはしっかりした理由がある。
彼女は法治国家アヴァロンの象徴である天空に浮かぶ巨大な城、王の居城から家出してきた王位継承権を持つ歴とした王女だった。
「や……やった……!」
気が遠くなる程歩き続けフラフラになりながら微かに見えてきた街並みと塩の香り。昂ぶる気分を抑え切れずにエリザベスは駆け出していた。
見えただけで実際は街まではまだまだ遠いのにも関わらず。
「ぜぇ……ぜぇ…………って、バカだ私!」
ぼふんと砂に倒れ込むエリザベスはどうやら少し抜けているらしい。
薄暗くなった空を見上げながら荒い息を整える。
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