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一瞬驚いたが…それにしてはカエンの好みとはちょっと違うっていうか…。
ダイナマイトなボディをお持ちなわけでもないし、顔もセクシー系美人っていうよりは平凡…いや、黒眼がちなくるっとした瞳が愛らしい清純派だ。
背も小さくて150cmあるかないか、細っこくって今にも泣き出しそうに震えている。肩までのふわふわハニーブラウンの髪が細かく揺れているのが可愛いらしい。
あれか?
好みのタイプと付き合う娘は違うってヤツか?
「…おい、なんか変な事考えてそうだが、違うからな?」
カエンに、いつになく抑えた声で威嚇された。
「おい!ライオウ!お前がさっさと入って来ねぇから、俺様があらぬ疑いをかけられてんじゃねぇか!さっさと来い!!」
カエンのイラついた声に扉を開けて入って来たのは、たてがみのようにキラキラ輝く金色の髪を持った男だった。
これはまた対照的な二人だ。
背丈も190cmはありそうだ。カエンと同じくらいだもんな。立派な体躯に黒の革ジャンを無造作に羽織った男は、威風堂々としてかなりかっこいい。
ただし、今はかなり眉を寄せた困り顔だ。
「だってよぉ…オレが入ったらそいつが泣くだろうが。」
親指で指す先には、座り込んで泣いているうさ耳ちゃん。
「キーツとイナバみたいな感じなのかな?」
ゼロが俺にそっと耳打ちする。
…そうかもな。
ウサギの獣人のイナバは、狐の獣人キーツの前だと泣いて震えが止まらなかった。
この二人、明らかにウサギとライオンだもんなぁ。
「ご…ごめん…なさいぃ~…。わた…し…泣くつもりじゃ…。」
しゃくりあげて泣いているうさ耳ちゃん。耳も寝ちゃってるし、見た目かなり可哀想だが…俺は知っている。泣かれているライオン君の方もかなり傷ついている筈だ。
ライオン君の肩をポンと叩く。
「あんたも大変だな。ウチにも狐とウサギの獣人がいるんだ。本能的にああなっちゃうらしいから、気にしない方がいい。」
「そうそう。今はいいコンビだもんね。」
ゼロも援護射撃してくれた。
「あの…大丈夫ですか?」
そのままゼロはうさ耳ちゃんを心配げに覗きこむ。
うさ耳ちゃんは泣き腫らした目のまま、ゼロをじっと凝視した。あまりに見つめられて、今度はゼロの方が赤くなってくる。
なにやってんだ。
「怖くない…。」
うさ耳ちゃんがポツリと呟いた。
「え?なんて言ったの?」
「やっと怖くない人に会えたぁ!」
「うわっ!?」
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