街へ

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新しいダンジョンがほぼ形になったところで、俺達は美しい海を眺めながら、遅い昼メシを食う。 景色がいいと、なんか優雅な気分になるな…。 錬金部屋から出てきたマーリンとブラウも、大はしゃぎだ。ブラウは急いでメシをかきこむと、ユキを連れて泳ぎに行ってしまった。 ルリが幸せそうにモニターをガン見している。 ガキとワンコが浜辺で追いかけっこ…。ここがダンジョンだって事をうっかり忘れそうなくらい、平和な絵面だな。 ゼロと顔を見合わせて笑っていたら、ご褒美ルームのエルフ達がモニターごしに話しかけてきた。 「すいません、ゼロ様。ちょっと相談したい事があるんですが。」 ゼロは首をすくめて、ヤバい…と呟いた。そうか、まだ家庭教師テストに合格してないのが3人いるんだったか? しかし、エルフ達の用件は思いがけないものだった。知的美人エルフのミズキが、申し訳なさそうに切り出す。 「昨日来た冒険者の方に、3時間家庭教師を行ったんですが、実はその…スキルを習得出来なかった方もいまして…。」 冒険者じゃなくて兵士だけどな。 …て言うか、そういう事は早く言ってくれ。 ミズキは言いにくそうに眉を寄せている。 「…と言うか、魔法系は全滅だったんですわ。結構昨日は時間を延長して頑張ったんですが、…申し訳ありません。」 …それは仕方ない。ゼロみたいにぽんぽん覚えられるのが、そもそもおかしいんだし。 「それで、冒険者の皆さんが、お金を払ってでも覚えたいから、スキル教室みたいなものが開けないか、聞いて欲しいと仰ってたんですが…。」 練兵場にスキル教室か…。 いよいよダンジョンの範疇こえてきたな。 だが、悪くない。 スキルはギルド員同志で教えあう事が多い。低レベル冒険者を、多岐に渡って育成するような施設は少ないんじゃないだろうか。 さらに爽やか男エルフのダーツが、ゼロにごく当たり前のお願いを口にする。 「それからゼロ様には、ぜひ残りの3名のテストもお願いしたいんですが。」 やっぱりな。だが、丁度いい。 「ゼロ、先にテスト済ませちゃえよ。俺、その間にちょっと街に行ってくる。スキル教室やるにしても、カフェにしても、今街ではどんなのが流行ってんのか、知っといた方がいいだろ?」
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