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目が覚めると、知らない部屋にいた。
目の前には15~16歳くらいの、気弱そうな男が立っている。
何故かは分からないが、目に涙を浮かべ可哀想なくらい震えているが…。
え~っと…
ああ、そうか…
少し考え事情が飲み込めた俺は、そいつを怖がらせないよう、出来るだけ優しい声で話し掛けた。
「あ~…俺、もしかして召喚された感じ?あんた、マスターか?よろしくな。」
「………!」
そいつの肩が、大きくビクン!と跳ねた。
相当ブルってるな…可哀想に。
大きく見開いた目からは、既に涙がボロボロとこぼれている。
精神的に限界でも迎えていたのか、そいつはくしゃっと顔を歪めると、大泣きしながら俺に飛びついてきた。
部屋には他に誰もいない。俺の腕の中で泣きじゃくっているこいつがマスターで間違いないだろうが…。
やれやれ…俺のマスターは随分とヘタレのようだ…。
しかし困ったな。
会ったばかりでどんなヤツかも分からないだけに、かける言葉が何一つ見つからない…。
しゃくりあげて泣いているマスターの背中をとりあえず軽くさすって、気持ちが落ち着くのを待つ。
小一時間程泣いていた(長い!)マスターは、落ち着くとポツリポツリと俺を召喚するまでの経緯を話してくれた。
目が覚めたら見覚えのない、真っ白な扉もない部屋にいたこと。
記憶が消されており、自分の名前すら分からないこと。
部屋にあった手紙によると、彼自身も異世界から召喚されたようであること。
そして手紙の大部分を占めていたのは、ダンジョンマスターとして召喚された彼がなすべきことと、その手法だったこと…。
マスターが異世界から召喚されたってのは驚いたが、そうなるとがぜん話が面白くなってくる。
よくは分からないが、俺を召喚したって事は、俺はダンジョンモンスターとして、その、ダンジョンマスターの仕事を手伝うんだよな?
うん、わくわくしてきた!
はやる気持ちを抑え、なるべく冷静に話を進める。
「で?実際ダンジョンマスターって、何やりゃあいいんだ?」
「えっと…一ヶ月以内にダンジョンを作って開放して…後は秘宝を狙ってくる冒険者と戦うみたい。」
マスターはどもりながらも懸命に答えてくれる。とりあえず嫌なヤツではなさそうだ。
「…秘宝?」
「うん、これ…。このダンジョンコアっていうのが秘宝なんだって。」
マスターが透明な球を見せてくれた。
凄い魔力は感じるな、確かに。
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