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「ええ~っ!ずるいよ!僕も行く!」
なんだ、ずるいって…。
手分けした方が効率的だと思うんだが…。
「あたしも行くっ!服とか見たかったの~!」
「あのぅ、出来れば私も…」
次々と参加者が増える。
言っとくが、俺達はまだ無一文だぞ?
そう言うと、ルリは楽しそうに笑う。
「バカねぇ。女の子は可愛いものを見るだけでも楽しいのよ?」
マーリンもニコニコしながら頷いている。
…そんなもんか。
しかし、いくら市場調査とはいえ、こんなに大人数は必要ない。街は皆に任せて、俺は…。
…と思っていたら、いきなり景色が街中に!?
ゼロが有無を言わさず、街に転移したらしい。あのままいたら、エルフ達に止められるからだろう。
…逃げたな。
ちなみにダンジョンモンスターは、マスターの指示がなければダンジョンからは出られない。勝手に街や人を襲ったりしないように、最低限の縛りがかけてある。
逆にマスターの指示があれば、本人の同意がなくても、こうしてダンジョン外に出されてしまうわけだな。
ゼロはいつも本人の意思を尊重してくれてたから、そんな事も忘れてた。
来てしまったものは仕方がない。
当初の目的通り、しっかりと街のトレンドを把握してから帰らないとな。
思えば前回街に来た時は、早く帰る事ばかり考えていて、ロクに街並みも覚えていない。相変わらず冒険者達が闊歩しているから、彼ら目当ての商売はきっと多い筈だ。
「きゃ~っ!これ、可愛い~!」
「私、こっちのフリフリの方が好きですぅ~」
「ねぇゼロ、どっちが好き?」
「え、あの…えっと…」
…隣から聞こえてくる会話にぐったりする。俺は、結構真剣に考えてるってのに!
イライラしながら歩く事1時間。
…スタート地点から200Mくらいしか進んでないんじゃないか?これ。
ひとつひとつの店に丁寧に入り、これまた丁寧に商品を吟味していく女性陣。
金も無いのにアホらしい。
…いやいやいや、落ち着け、俺。
市場調査だ、市場調査。
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