理解者

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 面白いことが起きそうな気配は微塵もない、おれは鏡で自分の顔を確認し納得のいくまで眺めたあと窓を開けて朝日を浴びた。すると天井に押しつぶされそうな窮屈な感覚を覚えしっかりと身なりを整えたあと、部屋の外に飛び出した。  外に出るとおれは重大な問題に気付いた、おれには友人が、恋人が、良き理解者がいないのだ。今年で20のおれだがカップ麺をすすり、一人孤独に死んでいく将来が目に浮かぶ。うつろな目でおれは大通りを外れ日の当たらない細い路地を理解者を探しさまよった、路肩ではゴミ袋を携えた婦人たちが金切り声で挨拶を交わしている。婦人たちは横目でこちらを見つめ、眉をひそめたかと思うと今度はヒソヒソとなにか話しだした。やつらはおれの口から絶え間なく漏れ出す白い煙のことをよく思っていないようだ。まったくもって気分が悪い、おれは足を早めた。  「おはようさん。」  急に服の裾を掴まれたおれはのけぞりそのままの勢いで後ろを振り向いた。目の前にいたのはいかにも不労者と言った風貌の老人が一人、しかし彼の顔からはなんの魂胆も感じられない。俺は間髪入れずに彼に問うた、  「私の理解者、どうか話を聞いてください。」  彼は多忙のようで、話を聞けないかわりに良い病院を紹介して下さった。 おれは彼に言われたとおり路地の真っ直ぐ突き当りを右に曲がり、またその路地を真っすぐ進んだ。image=472382480.jpg
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