エピローグ

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「・・・・・・、・・・・・・」 正直、拾うのも億劫だった。いまだに僕の右腕は無い。だから、左腕だけ伸ばして拾う 落としたのは手帳だった。落ちたときにページが開いたのか、僕の左腕はそれをそのまま持ってくる 「・・・・・・、あーあ」 開いたページに目を落とすと、『シャシャは辛い物が苦手』という走り書きが書いてあった ・・・・・・、ああ、あの時のか・・・・・・、もう、全部無駄になってしまった 僕は思わず手帳を投げ捨てる 「・・・・・・、なんというか」 やりきれない 珍しく、僕は陰鬱な気分だった 僕は眼を閉じて考える あの時シャシャが言った言葉。笑顔。涙 滅多に表情が変わらなかった彼女の最後を 思い返す こんな気分になるなんて、この僕がこんな思いを背負うなんて、最初のころは思いもしなかった 僕は無感動で何事にも悲しくならないし、何事も泣かないような、そんな人間だと思っていたのに ―――、きっと僕は最悪の転生者なのだろう。すべてを狂わす。何もかもを歪める。何一つの例外なく 正義も悪もない。敵も味方もない。僕の周りではすべてが零に還った
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