第五章・敵と味方

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  (…いやだな…) 緋色は新撰組の皆が大好きだった。 …総司を、 彼のいる新撰組を守りたいと本気で願っている。 けれど… その「仇」となるはずの目の前にいる人物を、 自分は嫌いになれないでいるのだから。 「…白雪?」 ついぼうっとしてしまい、 稔麿に呼び掛けられてるのにも気付かなかった緋色は、 ハッと我に返って慌てて「はいっ!」と返事をする。 稔麿は怪訝そうな顔で緋色を見つめていた。 「…何度も呼んでるのに無視するなんて…本当に君はいい度胸をしてるよね?」 「え?あっ、ご、ごめんなさいっ!つい…。」 「ははは…」と乾いた笑いを溢す緋色をじとっと見つめると、 稔麿は深いため息をついて杯を置いた。 「…で、どうしたの?」 「…へ?」 「何かあったわけ?」 「あ…の、一体何の話を?」 脈絡がない稔麿の言葉に、 緋色は意味が分からず首を傾げる。 そんな彼女を稔麿は馬鹿にしたような目で見やると、 わざとらしく再びため息ついた。 …さすがの緋色も、 ぐさりと胸に突き刺さる。 「…何か、悩んでるんじゃないの?」 ぽつりとそう小さく言った稔麿に、 「え…?」と緋色は目を見開く。 「俺が気付かないとでも思ったわけ?…能天気な顔が取り柄のくせに、さっきから辛気くさい顔ばかり…見てるこっちの気が滅入るんだけど。」 (…貶されてるようにしか聞こえないんだけど…) 緋色は苦笑すると、 「何でもないですよ」と笑った。 それに稔麿は「…ふーん…」と答える。 …すると次の瞬間、 ふわりと何かが緋色の髪に触れた。 「…え?」 それは、 稔麿の掌だった。 突然の事に驚き固まる緋色の瞳を、 稔麿は真っ直ぐに見つめる。 「…なら、なんでそんなに泣きそうな顔してるの?」  
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