第五章・敵と味方

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―――――― ―――― 2月に入り… 店の忙しさもだいぶ落ち着いてきた頃の事である。 「えっ!?沖田さんが…!?」 凛から告げられた内容に、 緋色はぱぁっと顔を輝かせた。 昼見世の準備をしていると、 使いに出ていた凛が「朗報どすっ!」と勢いよく部屋に飛び込んできたのである。 「へぇ!姐はんによろしく言うてました!」 嬉しそうな緋色の様子に、 凛もまた嬉しそうに笑った。 …お使いの途中、 たまたま巡察に出ていた総司と会ったらしい。 そして、 「明日非番なので会いましょう」と凛に言伝を頼んだようだ。 「そっか!ありがとう、凛!」 緋色が満面の笑みを浮かべて凛の頭を撫でると、 彼女は嬉しそうに目を細める。 (沖田さんに会える…!) そう思うだけで、 自然と口許が緩んでしまう。 ただ会えるという事が嬉しくて仕方なかった。 …今さらながら、 自分はこんなにも総司の事が「好き」なのだと… 改めて認めざるを得ない。 離れている時間が恋しくて、 「会いたい」という気持ちばかりが溢れてどうしようもなかった。 そう素直に想えるのが嬉しい反面、 怖くなってしまう。 …これ以上彼を好きになって、 溢れる「想い」を抑えられなくなってしまったら…。 (それだけはダメ) 緋色は想いを振り切るように首を振ると、 微かに自嘲した。 …「深み」にはまってはいけない…      ・・ 自分にその資格はないから。  
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