明け方の月。

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  「待たせて、ごめん。愛美、好きだ」 「……っ、もう……!」  ドン、と胸を叩かれる。ちっとも堪えない。  むしろ愛美のその仕草には、可愛らしさしか漂っていない。  どうやら、俺は自分で思っている以上にこの女にベタ惚れらしかった。  乱れた愛美の髪をサラッと撫でて、額に口唇を落とす。そうしてもう一度彼女の顔を上から覗き込んで──。 「俺の全部、お前のものにしていいから……許してくれるか?」  思いも寄らないことを言われた愛美の呼吸が、一瞬止まった。  その隙をついて、強めに彼女を揺さぶる。  小さな悲鳴を上げた愛美に、答える余裕など与えるつもりはなかった。  だって、俺は全部判っている。  それは、聞かなくてもいいことだ。 .
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