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優美が教えてくれた鍵の壊れた窓から
忍び込み。各々が持ち寄った、懐中電灯で真っ暗な学校の廊下を照らす。昼間の雰囲気とは違って静寂の支配する校舎は唾を飲み込む音すら響きそうなくらい静まり返っていた。
言い出しっぺの優美が先頭、その次をウチ、最後を千由の順で並んで歩いく。
「お化けなんてほんとにでるのか、見物じゃない?」
先頭を歩く優美がおかしそうに言った。きっとお化けなんて信じていないんだ。ウチや千由の怖がるところを笑う魂胆なんだと思えばなんともなかった。
「ウチは嘘だと思うけど、つーか、千由、服、引っ張んないで」
反面、そういうことにめっぽう弱い千由はウチの服を破けそうなくらい強くにぎりていた。
「ごめん、由真[ユマ]ちゃん」
消え入りそうな声でも力は緩む気配はない。少し鬱陶しく感じた、その時。
『なんばしょっとね』と、声がした。
「由真、あんた、何か言った?」
「ウチ、なんも言ってないし、優美こと、脅かそうとして自作自演とかやめてよ」
『なんばしょっとね』と、また、声がした。
「あぁぁぁあぁぁあぁあ!!!!」
千由がどこからそんな声が出てくるのかと聞きたくなるような悲鳴を上げて。
「足首な何か……いる」
「ハァ?」
振り返り、優美が千由の足下を照らす。
そこには、目玉が陥没した同い年くらいの男の子が千由の足首を握ろうとしていた。
「優美ちゃん、由真ちゃん」
「何これ、ちょっと、早く離れるし」
「早くしなさい!!」
『なんばしょっとね』『なんばしょっとね』と繰り返し、床に爪を立ててズルリと動いた。
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