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「嘘、嘘よこんなの」
懐中電灯で男の子と呼んいいかわからない者を照らす先、そこに何もなかった。
男の子の上半身だけで動き、腹部からデロリと腸のような物が飛び出し、下半身はなかった。陥没した両目で辺りを見渡しては両腕で地面をなぞるように進む。
「あぁぁぁあぁぁあぁあ」
千由が悲鳴を上げると同時にウチも優美も走り出していた。後方から千由の転ぶ音と悲鳴が聞こえたけれど、構ってる余裕なんてなかった。
ウチらの中でも一番、足が早い優美が瞬く間に距離を離していく。千由とも離れてまった。幸いなことにここは一階だ。窓を開ければ外に出られる、助けを呼べると窓に手をかけたけれど。
「ちょっと、ふざけんなし」
窓は開かない。ビクともしない。
「閉じ込められた?」
自然と足が震えた。あんな化物が徘徊する学校なんて一秒でも早く出たいのに、ウチは辺りを見渡し火事の時に使う、消火器があった。
「………ンッ!!」
消火器を抱え、窓ガラスに叩きつけた。叩きつけたのに割れない。傷一つ入っていない。
「嘘」
もう一度、叩きつけた。割れない。
『なんばしょっとね』
あの声がした。
見渡しても、化物の姿はない。幻聴でも聞いてるのかと心配になって、頭にビチャッと何かが垂れて前髪に涎のようなものがたれた。
『なんばしょっとね』
真上から、あの声が聞こえた。恐る恐る真上を見た。大口を開けた化物が天井に張り付いていた。
『なんばしょっとね』
振ってきて、ウチの頭にかぶりついた。
「あーーーーーーーー!!」
爪が皮膚に突き刺された。歯が頭に食い込んで血液が吹き出し、もう片方の手が顔を掴み目玉に指がねじ込まれる。
「あーーー!! あーーー!! あーーー!! あーーー!! あーーー!! あーーー!!」
指が動き目玉が潰れ、指先が眼球内を抉られた。
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