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駅前の遊歩道を歩いていた女子校生の理恵は、ストリートショップが大好きだった。学生向けに様々な自作した商品が並んでいて、既製品にはない魅力があるから。それに、運が良ければ、店の品より安く買うこともできる。
前に理恵は、ストリートショップで可愛らし指輪を買った。『幸運』という売れ込みだったけど、今のところ、それといって良いことは起きていない。元々、幸運なんて怪しかった。彼女の場合、デザインが気に入って買ったにすぎなかった。
でも、彼女は時々思う。本当に幸運というのを運んでくれるモノがあるなら、一度でいいからあやかってみたいと。
「あ、これ・・・」
理恵は一つの店の前で足を止めた。そこの店では、携帯電話用のストラップを扱っていた。愛らしい天使と悪魔のマスコットがワンセットになっているストラップだ。彼女は、一目見て、そのストラップが気に入った。
「すいません。そのストラップ、売っていただけませんか?」
「いいですよ。幸運の天使と不運の悪魔のマスコットね」
折り畳み椅子に座っていた商人が、天使と悪魔のストラップを紙袋にしまおうとした。
「ちょっと待ってください!」
「何か?」
「今、幸運のと不運の悪魔と言いませんでしたか?」
「言ったよ。天使が幸運を呼び、悪魔が不運を呼ぶ。それが、何か?」
商人は不思議そうな顔をしていた。理恵は首を左右に振って、
「じょ、冗談じゃないわ!幸運のマスコットならまだしも、不運のマスコットまで付いてくるなんて。その悪魔の方を切り離して、幸運の方だけください」
「それは、出来ません」
商人は理恵の頼みを頑なに断ってきた。
「どうしてよ!不運のマスコットなんて、欲しくないわ」
「まあ、慌てないで理由を聞いてください」
商人はそう言うと、周りに声が聞かれないよう小さな声で事情を説明した。
「実は、私以前より呪いや幸運の研究をしていましてね。最近、やっと幸運と不幸を呼び起こす秘術を発見したのです。それを、応用して、幸運と不運のマスコットを創り上げたのです。ところが、このマスコット・・・。どういう訳か、片方だけでは効力が発揮されないのです」
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