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「はいコレ」
「は??」
洗濯物を干している最中。そう言って、何の前触れもなくカノが手渡してきたのは一輪の真っ赤なカーネーションだった。
「いきなり、なんだ?昨日割った皿の点数稼ぎか?」
「えー違うよ?酷いなぁ…まぁいいや、あげるよ。じゃ僕これから任務だからさ、遅くなるから先にご飯食べてて」
「え?おい、ちょっと待て!」
怪しむキドとは裏腹に、いつも通りの掴めない笑顔を浮かべてカノはひらひらと手を振って出かけていった。
「…何なんだ?カノのヤツ」
思えば、カノから何か貰うなんて何年ぶりだろう。最後に貰ったのは確か10歳の誕生日、近所の雑貨屋で買ったらしい瓶詰めのカラフルなキャンディーだったか。あの頃はまだ自分も素直なとこが残っていたから、とって置いて一つ一つ大事に食べた記憶がある。最後の一個のイチゴ味は手違いでセトに食べられてしまって、3日間も大泣きしていた。
でもまあ、きっとカノはそんなこと覚えてないだろう。
残されたキドは頭のなかに疑問符を浮かべたまま、カーネーションを潰さないようにパーカーの前ポケットに仕舞い、途中になっていた作業に戻った。パタパタと白いシーツが揺れる空は、いつもと同じく水色だった。
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