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おあつらえの家を見つけた。
玄関の反対側は街灯も届かず、真っ暗だ。
部屋の明かりに慣れ、暗闇には慣れていない目がなにかの拍子にこちらを見たとしても、闇以外なにも見えないだろう。
その家もすぐ近所の家も、犬は飼っていないようだ。
犬はまずい。
たとえ見えなくとも、いとも簡単に、「俺」の存在をかぎつける。
家の明かりはどこにも点いていない。
住人はそろっておやすみのようだ。
俺は静かにすみやかにブロック塀を乗り越えると、裏にまわった。
壁の向こうは、どうやら台所らしい。
ますますいい。
――さてと。
仕事、に取り掛かった。
・
「俺」が最初に、仕事、をしたのは、いつのことだったか。
よく覚えていない。
たぶん、六歳か七歳か八歳あたりか。
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