適任者

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「私」はベッドから降りた。 ベッドと言っても、厚めのマットレスに、敷布団と掛け布団、それに枕を加えただけのものだが。 それでも私は、それを、ベッドと呼んでいるのだが。 ベッドのそばにある長年使っているラジカセのスイッチを入れる。 この部屋にテレビはない。 FM局から、聞いたことのない曲が、流れてくる。 アイドルなのだろう。 甘ったるい歌詞に、やけに明るいメロディ。 そして歌唱力の足らない若い女の歌声。
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