適任者

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「私」は生まれつき特別な人間なのだ。 ――もう一度、やるか。 ベッドに目を移す。 再度、試みることにした。 私はベッドに身体を沈めると、目を閉じた。        ・ 気がつくと部屋にいた。 「私」の体はいつものように、ベッドに横たわっている。 とは言っても、前とは明らかに違っていた。 以前は、いつのまにか自分の部屋に戻っていた、という感じだった。 戻ろうと思うこともなく、戻っているという自覚もなく、意識が閉じている間にいつのまにか帰ってきていたのだ。だが今は、わずかではあるが ――そろそろ戻ろう――と意識し始めた時に、なんとなくではあるが、今戻っているという自覚を持って、部屋に帰ってきている。 とにかくたいした進歩だ。 立つこともできなかった幼子が、今や危なっかしいながらも自らの二本の足であるいているような。 そのくらいの差がある。
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