前菜

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「……さん、森下さん?」 「あっ…はい?」 「急に黙ったりするから、どうしたのかと思いましたよ。」  いけない、いけない……自分の世界へと入り込むところだった。   「すみません、ちょっと考え事してて。 そ、それよりこのマフラー…。」 「放課後にまた会うんですから、そのとき返してもらえば良いです。」 ……そっか、また会える。嬉しい。 ちなみに私は、生徒会の顧問の桐島先生に接近するために、やりたくもない生徒会役員になった。 そして、今日がその役員が活動に参加する日だった。 「分かりました。 じゃあ、また放課後。」 「時間に遅れないで来て下さい。では。」 先生が手を振りながらここから去っていく。 その大きな後ろ姿を私はいつまでも眺めていた。
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