その始まり

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マナブは夢を見ていた。近所の公園の側を散歩している夢だった。 電線の雀、電信柱の烏、茂みの中の野良猫、無残にも車に轢かれて潰れた蛙。マナブの脇を犬を連れた小学生の団体が駆け抜けて行く。公園前の駄菓子屋のおばちゃんは公園で遊ぶ子供達を優しそうな目で見守っている。そんな中をマナブは歩いていた。 だが、その平穏は突如壊された。大きなクラクションの音が響き渡って、 「起きろー!いつまで寝てるんだよ朝飯もらうぞ!」 マナブは目を覚ました。カーテンを開けながらそう言った姉にマナブは渋々とベッドをおりた。 「姉さん、お母さんは」 休日に姉が起こしにくることはまずない。平日はなかなか止まらない目覚まし時計のアラームに苛立って部屋に飛び込んでくることはある姉だが、休日は大概朝早くから大学のサークルに顔を出しているのでそもそも家にいないのである。なので休日は昼前に母親が起こしにくるのだ。 「あんた気がつかなかったの。母さんなら今朝早く父さんの方の法事に行った」 「ふぅん。じゃ、姉さんはなんでいるの」 「うちのサークルメンバー、あたし以外恋人持ちでさぁ。みんななんかの理由で遠出デートするらしくてね。親友なんか今日は泊まりだってさ」 「へー。俺も友達と旅行したいな」 「はいはい、無垢な小学生はいいわね。さっさと着替えて出てきてね、皿いっぺんに片付けたいから」 「はーい」 マナブは適当に服を引っ張り出して着替えた。顔を洗ってからリビングで朝食をとり、マナブは財布と携帯をズボンのポケットに突っ込んで外へ出て行った。 「適当に散歩してくる!」
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